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2021.6.16
食中毒にご注意!
関東地方も梅雨入りし、この季節になると増えてくるのが食中毒です。
食中毒の原因として有名なのは細菌やウイルスなどの微生物によるものですが、これ以外にも化学物質による食中毒(ヒスタミンなど)、自然毒による食中毒(フグや毒キノコなど)、寄生虫による食中毒(アニサキスなど)などがあります。梅雨から暑い時期にかけて最も注意が必要なのは、サルモネラ菌、カンピロバクターなどの細菌による食中毒です。飲食店などで集団食中毒が発生すると大きなニュースになりますが、気を付けないと家庭でもよく起こります。
微生物による食中毒には、微生物そのものの量が増えて症状が起こるものと、微生物がつくる毒素によるものがあります。食品に付着した微生物や毒素を食べることによって、発熱や、腹痛、嘔吐、下痢などの消化器症状が起こりますが、症状が出るまでの潜伏期間は微生物の種類によって異なり、1~7日程度と大きな開きがあります。一週間前に食べたものが原因である可能性もありますので注意が必要です。
・カンピロバクターによる食中毒
微生物による食中毒の原因として、最近増加しているのがカンピロバクターです。カンピロバクターは鶏の腸管の中に多く存在するため、鶏肉を加工する時に肉の周りに付着しやすいのです。市販の鶏肉の2~6割が汚染されているともいわれています。カンピロバクターは低温に強く、冷蔵庫・冷凍庫の中ではほとんど増殖はしませんが死滅もしません。このため冷蔵庫から取り出すと、夏の気温ではあっという間に菌が増えてしまします。しかし熱に弱いため、65度以上で数分間加熱すれば問題ないと言われています。カンピロバクターによる食中毒を防ぐには、低温で保存し十分加熱することが大切です。
・サルモネラ菌による食中毒
サルモネラ菌による食中毒は、主に菌が増殖した卵を食べることにより起こります。サルモネラ菌に汚染された卵は0.003%以下と非常に低いとされていますが、ゼロではありません。汚染された卵が古くなると菌が増殖して食中毒の原因となりますが、1999年に卵の賞味期限が表示されるようになってからはサルモネラ菌による食中毒は減少しています。卵は常温でも一定期間保存できますが、温度が高いと菌の増殖までの期間は短くなります。賞味期限は冷蔵庫で保存していることが前提です。
・ウエルシュ菌による食中毒
ウエルシュ菌は自然界に広く分布しており、特に肉や魚に付着していますが、他の菌と異なり熱に強いことが特徴です。また常温でも増殖し、酸素のない環境を好むため、大きな鍋でカレーやシチューを作り置きすると増殖しやすいとされています。芽胞という状態になると100℃の熱でも死滅しないので、加熱しても効果がありません。体内に入ると、小腸で毒素を産生して症状が出ます。なるべく作り置きをしないこと、やむを得ない場合はすぐに冷ましてから冷蔵庫で保存することが大切です。
・ブドウ球菌による食中毒
ブドウ球菌は健康な人でも皮膚の表面に存在することがあり、特に傷口の化膿やニキビなどの原因となる菌です。このため「手作り」食品でブドウ球菌が増殖し、毒素が産生されて発症します。潜伏時間が30分~6時間程度と短いのが特徴です。毒素は加熱しても分解しませんので、調理時には手袋などを用いて直接手を触れないこと、けがや傷がある場合は調理をしないことが大切です。
このほか、冬にはノロウイルスによる食中毒が多く発生しますが、また別の機会に。
いろいろな食中毒